JAIST Repository >
b. 情報科学研究科・情報科学系 >
b30. リサーチレポート >
Research Report - School of Information Science : ISSN 0918-7553 >
IS-RR-1998 >
このアイテムの引用には次の識別子を使用してください:
http://hdl.handle.net/10119/8382
|
タイトル: | 口腔疾患に伴う構音障害の音響的特徴に関する研究 |
著者: | 齋藤, 浩人 赤木, 正人 |
発行日: | 1998-03-26 |
出版者: | 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 |
誌名: | Research report (School of Information Science, Japan Advanced Institute of Science and Technology) |
巻: | IS-RR-98-0011P |
開始ページ: | 1 |
終了ページ: | 39 |
抄録: | 口腔領域疾患あるいはその術後後遺症によって、しばしば言語障害が生ずるが、それらの異常音の診断は医療従事者の聴覚印象に頼っているのが現状であり、歪音の音響評価は客観的、定量的評価に欠けることが多い。構音障害の客観的評価を試みた報告としては、構音運動を観察したものとしては、エレクトロパラトグラフィー、超音波診断装置、顎運動解析装置、MRI撮像などがあり、音響分析によるものとしてはサウンドスペクトログラフ、パワースペクトラムなどによるものなどがある。しかし口腔疾患による構音障害の音響的特徴と構音動態との関連の検討及び音響的な物理量と聴覚的な特徴との関連に関する検討は十分に行なわれていない。特に舌・口底悪性腫瘍切除後には舌・口底の欠損と運動障害による構音障害を生じリハビリテーションの一貫として舌接触補助床(Palatal Augmentation Prosthesis(以下PAP))および訓練によって機能の改善を図るが、本装置による構音動態および音響的な変化について検討した報告はほとんど見られない。そこで、本研究では舌・口底切除1症例について、術後経過および、PAP適用前後の構音動態および音響特性についてパラトグラフィー、発語明瞭度、音響分析、核磁気共鳴画像(MRI)による音響管モデルを用い検討を行なった。その結果、母音では術後から現在に至る経時的な明瞭度の変化やPAP装着による明瞭度の改善はわずかであったが音響分析ではフォルマントが健常人に近い位置へ移動することが確認された。特に[i]ではパラトグラム所見上で舌の口蓋前方方向への接触領域が増加し、音響的にも改善がみられた。子音では主として歯音・歯茎音のPAP装着による改善が著しく、パラトグラム所見でもPAP装着によって舌の口蓋への接触の増加がみられ、明瞭度の著しい上昇がみられた。音響特性にも著しい変化がみられ、第一強調部の上昇及び音圧の増加が確認された。特に、子音[∫]では舌による狭めの形成が健常人に近づき、明瞭度が、PAP装着により、20%から90%に改善されるという効果が確認された。音響分析においてPAP装着により歯音・歯茎音の第一強調部が上昇し音圧増加も見られた。この改善は健常人に近い方向への変化であり、PAPの有用性が示された。また、[i]発音時に核磁共鳴画像(MRI)撮影を行ない、声道音響管モデルを作製した音響データと実音声とを比較したところPAP装着時には発音時の狭めの増加は音響的な変化を引き起こし、声道の狭めの重要性を示した。以上より、PAP装着による舌接触部位の増加は発語明瞭度と音響特性の改善に有効であることが示され、発音における狭めの位置の重要性が示唆された。すなわち、PAP装着による適切な舌接触部位の増加は、発語明瞭度の改善に貢献し、特に音響特性改善に有効であり、自然性をもった音声発声にとって重要であるということが明らかとなった。今後、これらフォルマント位置の定量化、切除部位や再建材料による違いといった他症例との比較検討を行う。それらは、口腔疾患による異常音の客観的な診断が可能となり、どの診療機関においても適切な治療を助ける手だてとなるであろう。Speech characteristics uttered by a patient after tongue and mouth floor resection are investigated using palatography, speech intelligibility test and acoustic analysis. Analyzing vowel[i], the contact area increases and the formant frequencies move to normal speech positions with Palatal Augmentation Prosthesis(PAP). In the utterances of[∫], since the vocal tract can be constricted with PAP, speech intelligibility improves, the lowest formant characterizing[∫] shifts to the higher frequency, and the power level of the higher frequency increases. Additionally, vocal tract shapes are measured using a magnetic resonance imaging(MRI) and formant frequencies are estimated from the measured vocal tract shapes using a vocal tract model, to investigate relations between estimated and analyzed formant frequencies. The findings lead to the following conclusions: (1) The position of the vocal tract constriction is important to utter natural speech with high intelligibility. (2) With PAP produces a wide constriction of the vocal tract was produced and high speech intelligibility score for the patient was obtained. |
URI: | http://hdl.handle.net/10119/8382 |
資料タイプ: | publisher |
出現コレクション: | IS-RR-1998
|
このアイテムのファイル:
ファイル |
記述 |
サイズ | 形式 |
IS-RR-98-0011P.pdf | | 62388Kb | Adobe PDF | 見る/開く |
|
当システムに保管されているアイテムはすべて著作権により保護されています。
|